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テノール|大西貴浩  ジャーナル
journal

金刀比羅宮(香川県)

KOTOHIRAGU

香川県仲多度郡琴平町892-1

テノール|大西貴浩 ジャーナル 神社を巡る金刀比羅宮(香川県)

2014年12月9日、熊野本宮大社で自身初となる奉納演奏を行った。それまで思いもしなかった奉納というカタチでの演奏。だが、よくよく考えてみると、奉納というカタチで神社と関わったのは2度目だったこと思い出した。しかし、それがいつだったかはっきりとは覚えていない。中学2年の頃だったようにぼんやりと覚えているくらいの曖昧な記憶。私の生まれ育った町はまんのう町という香川県の中でも西側に位置する小さな町(当時は仲南町といっていたが、合併によってまんのう町となった)だったのだが、お隣は「こんぴらさん」の愛称でした親しまれている金刀比羅宮のある琴平町であった。そんな身近な存在だったこんぴらさんにはよく足を運んだ。お正月はもちろん、春に夏にとその石段を登ったものだ。金刀比羅宮では毎年、奉納学童写生大会という行事が春に行われている。私はその写生大会に参加し、なにがしかの賞をいただいた。メインの賞ではなかったと思うが賞状をもらったことをぼんやりと覚えている。それに反して、そのときに描いた絵についてははっきりと記憶している。

こんぴらさんの参道は春には桜で埋め尽くされる。その数3,500本。その参道の中でも、特に桜が美しい場所、それが桜馬場と呼ばれる桜の名所である。石段の数にして365段目から431段目がそれである。私はその桜並木を描いたのだった。水彩絵の具で淡く色付けし、その桜の優しくて儚い美しさを表現しようと一生懸命描いたのをよく覚えている。

こんぴらさんは言わずと知れた日本一の石段を持つ神社。その数、奥社まで1368段。御本宮までが785段で、そこからが583段。この御本宮から奥社までの583段がきついのなんの。しかし、その辛さに耐えて奥社に登り、奥社からみる讃岐平野の見晴らしのよいこと。平野の中に山が浮いているかのようにぽこぽこと配されている様は、なんともおもしろい景色である。この平野を一面水に浸せば、そこは瀬戸内海とそっくりになるのではないかと、見るたびに想像してしまう。ここも大昔は海だったのだろうか、そんなことを考えていると頭の中にはこんぴらふねふねが流れ始める。「こんぴらふねふね追風(おいて)に帆かけてしゅらしゅしゅしゅ」地元では歌えない人がいないくらい有名な民謡だ。盆踊りではかならず流れている歌である。この「追風(おいて)」という言葉、子どもの頃は「お池」だと間違えて覚えていた。香川県はため池の数が日本一多いところ、いたるところにため池がある、子ども心に間違えて覚えたとしてもその文脈に違和感がないのだからしようがない。

こんぴらさんはこんなに山奥にあるのにどうして船の神様なのだろうか。子どもの頃、それがずっと疑問だった。ある日、祖母にどうしてなのかと理由を尋ねてみた。「こんぴらさんは山の高いところにあるだろ、あそこからは瀬戸内海まで見渡せるんだよ。そして、瀬戸内海を航行する人たちも、こんぴらさんが見える。だから、みんなこんぴらさんを目印に船を漕ぐんだよ」なるほど。こんぴらさんは日和山というわけである。船乗りが海に出るときに日和(天気)をみるために利用した山、それを日和山といい、日本の海側のいろんなところに日和山がある。こんぴらさんはその日和山の中でも特に霊威の高い山である。私は、この素晴らしいこんぴらさんの麓で育った。そして、いま人生の航海に船を漕ぎ出し、音楽の世界に身を置いている。いつも晴れているときばかりではないだろう、曇って先行きが見えないときもあるだろう。そんなときにこそ、このこんぴらさんを思いを馳せよう。こんぴらさんはかならず私の先の道を照らしてくれるに違いない。

奉納演奏 2015年8月7日(1)/2016年9月23日(2)

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